入門講座

其の3
アスファルト基礎知識

アスファルトの種類や規格と試験

3-2アスファルトの品質規格の歴史

我が国で最初に定められたアスファルトの品質規格は、大正11年(1922年)に創設された東京市道路局試験所(現在の東京都土木技術センターの前身)の材料購買仕様書であると言われています。

昭和に入ると、アスファルト舗装工事が増え始めたため、アスファルト規格の統一が望まれました。それを受け、昭和7年(1932年)に「JES(Japanese Engineering Standards:日本標準規格)173号K27石油製品」が国の定めた最初の規格として制定されました。しかし、第二次世界大戦中は規格値を満足するアスファルトの入手が困難となったため、昭和16年には規格項目が少なく、規格値も緩い、臨時JES59号21に改訂されました。

戦後になり、昭和24年に国内で石油精製が再開されアスファルトの生産が始まりました。日本道路協会は、昭和25年(1925年)に刊行したアスファルト舗装要項で舗装用アスファルトの品質規格を定めました。また、昭和31年には、「JIS(Japanese Industrial Standards:日本工業規格)K2207石油アスファルト」が制定されました。

その後、石油事情の変化による石油アスファルトの品質の変化や使用者からの要請を受け、JIS規格と日本道路協会規格とも適宜改訂されてきましたが、昭和55年(1980年)に改訂されたJISで日本道路協会規格と整合がとられました。

昭和63年(1988年)の日本道路協会の規格に初めて改質アスファルトの標準的性状が記載されて以降,平成8年(1996年)、平成13年(2001年)にも改質アスファルトの規格が追記されています。

アスファルトの品質規格の変遷を表-2に示します。

表-2 アスファルトの品質規格の変遷

年 代 東京市 JES規格 日本道路協会規格 JIS規格
1922年
大正11年
材料購買
仕様書
     
1932年
昭和7年
  JES第173号K27
石油製品
   
1941年
昭和16年
  臨時JES第59号
石油製品21条
   
1950年
昭和25年
    アスファルト・セメントの規格  
1956年
昭和31年
      JIS K 2207-1956
石油アスファルト
1957年
昭和32年
    改訂  
1960年
昭和35年
      改訂
(JIS K 2207-1960
1967年
昭和42年
    改訂  
1969年
昭和44年
      改訂
(JIS K 2207-1969
1972年
昭和47年
    改訂  
1978年
昭和53年
    改訂  
1980年
昭和55年
      改訂
(JIS K 2207-1980
1988年
昭和63年
    改質アスファルト規格
(Ⅰ型、Ⅱ型、セミブローン)
 
1990年
平成2年
      改訂
(JIS K 2207-1990
1996年
平成8年
    高粘度改質アスファルトの標準性状追記 改訂
(JIS K 2207-1996
2001年
平成13年
    鋼床版舗装用、付着性改善、超重交通用の改質アスファルトの標準性状追記  
2006年
平成18年
    改質アスファルトの名称と区分を整理  

加納 孝志 (独立行政法人 土木研究所)

【参考文献】
  1. 牛尾俊介:道路用ストレートアスファルトの規格と試験法について、アスファルト、Vol31、No.157、p.9~34、昭和63年10月
  2. 牛尾俊介:道路用ストレートアスファルトの規格/試験法の変遷とアスファルトの品質評価について、アスファルト、Vol37、No.181、p.8~13、平成6年10月